11/8/05

やり場のない怒り




サイゴン・ビエナーレ主催の展覧会シリーズの第1回としてTran Huu Nhatの個展に行って来た。彼はフエ美術大学を出たばかりで、ベトナムの伝統芸術であるシルク絵の技術を用いてコンテンポラリーな主題の表現に取り組んでいる若いアーティスト。まだ荒削りだが、伝統芸術(シルク絵や漆絵)を学ぶ美大生の大半が「伝統」の箱の中から出られないベトナムの現状を考えると、自分を持っている数少ないアーティスト。いくつかユーモアのある表情豊かな作品があった。

彼の作品の善し悪しはとりあえず置いておいて、サイゴンビエナーレの運営に度肝を抜かれた。
到着してまずギャラリーの入り口にサインが無いのに驚く。私は数ヶ月前に同じ会場で行われたワークショップに参加していたので迷わずに済んだが、知らない人がいったらまず辿り着けない。数ヶ月前の時点ではサインが無かったのも「きっと移転直後で間に合わなかったのだろう」と思っていたのだが、今日に至ってもないのはおかしい。別にアンダーグラウンドな雰囲気を狙っているわけではない。単にオフィスの怠慢。そして会場に入って再度驚く。窓から入る自然光だけでライティングが何もセットアップされていない。これもアーティストの意志というのなら分かるが明らかに電気代節約。そして妙に空気がこもって蒸し暑い。シルクペインティングの展覧会だったが、数ヶ月後には作品に黴が生えている様子が容易に想像がつく。そして一番困惑というよりも笑ってしまったのはすべての作品が異様に高い位置にインストールされており、高さの違うキャンバス(基本的にすべて同じサイズのキャンバスを使用しているのだが、縦使いのと横使いのがある)がすべて底辺を真一直線上に合わせて展示してある事。ここまでくると「もしや、もしや、アーティストの何か狙いがあっての事?!」と思い本人にたずねてみるが狙いはないらしい。大学出たてでエキジビションの経験も少ないアーティスト自身に作品のプレゼンテーションにプロフェッショナルな意識が無いとは責めにくい。特にベトナムではまず大学で国際レベルの展示に関する知識(センターラインをまずとって...云々)なんてまず教えないので経験者が教えてあげるしかないのだ。

「サイゴン・ビエナーレ」と称してフォード財団からかなりのお金をもらって運営してるわけなんだから、せめてせめてせめて若いアーティストをサポートするというのならそういう基本的な事からサポートしようよ!!と思う。アーティストもそういうベーシックを知った上でそれに従うか従わないかを決めればいい。サイゴンアートに携わる者から言わせてもらうと本当にこういう資金があるのに意味のない使い方をしている現状に腹が立ってしょうがない。

サイゴン・ビエナーレのキューレーターに就任しているジュン(ジュン・グエン・ハツシバ)。現在はまだ韓国にいるはずだけど、彼はきっと何が起きているか知らないはず。って、いうか、知っていたとしたら彼のキューレーターとしてのセンスがわからない。
彼が帰国後、会って確かめなければいけない。

「どうせ海外からは重要なアート関係者はこないだろう」という前提に行われてる単なる既成事実作り(「サイゴンでビエナーレ(みたいなこと)やりました!」という事実)にしか見えないこの「サイゴン・ビエナーレ」。あーーーーーーーーーーーーーーーーーーー、恥ずかしいっ!!!!!!!!! ビエナーレの実行委員長(?!)を務める女性はギャラリィーは運営してるけど、なんかお金持ちの奥様がボランティアでアートサポートしてますって雰囲気があってアーティストからも信頼がない。でも彼女は実家が政治的に権力を持っていて何となく今のポジションにおさまっている。フォードもフォード。やる気も能力もないただの権力者にお金渡してどーすんのよぉ!!!!