12/9/06

albb talks: 「Seoul: Until Now!」 by Pontus Kyander




ここ2年余ずーっとプロジェクトをしようといいつつスケジュールが合わずに話がまとまらなかった相手がこの人Pontus Kyander。スウェーデン人のキューレーター、アート評論家。やっとお互いのスケジュールが合いそうだという事で来年のプロジェクトに向けてサイゴンにリサーチトリップに来た。スウェーデンの国営放送(SVT)でテレビ番組を使ってアーティストにインタビューしたり(これはよくあるので普通)、30分テレビ番組の枠をアーティストにあげて作品をコミッションしたりとユニークな活動をしてきた人。

昨年Seoul:Until Now!という韓国国外では最大規模になった韓国人アーティストのグループ展をデンマークで開催。 Jiyoon Leeとの共同キューレーション。この展覧会に選出した26人の作品を12月2日の夜7時半から10時までalbb talksとしてゆっくり語ってもらった。トーク直前にプロジェクターが故障するなどトラブルはあったものの質問も多く出て盛り上がった。

12/8/06

albb: reading room






先月始まったa little blah blah のリーディング・ルーム。毎月第一土曜日にalbbのオフィスのあるコレクション(現在約800冊)を公開する試み。先月は一日中停電に見舞われて夕方からは蠟燭の炎の元に読書、という一昔前の光景になってしまったが(風情はありましたが...笑)、今回は電気もオン、冷房もオン、新しい本棚で雰囲気も良くなったオフィスで気持ち良いスタートを切った。毎回テーマを作ってそのエリアの文献を中心に紹介するシステムにしている。先月はシンガポール、そして今月は韓国と香港。午前10時から午後7時までの間学生や若手アーティスト達が集った。

12/7/06

Free NZ Art






a little blah blahイベント第3弾は11月30日、Xcreamというカフェバーを貸し切って開催された。

Free NZ Artと題された今回のイベントはキューレーターであるTobias BergerがニュージーランドのオークランドのARTSPACEを去る前に最後に企画したイベントで12人のNZのトップコンテンポラリーアーティストにポスターデザインをコミッションし合計12種類のポスター各5,000枚、トータル60,000枚を展覧会来場者にお持ち帰りしてもらおうというもの。すでにオークランド、香港、アムステルダムにツアーしており、サイゴンは最後のツアーになった。各500枚、全部で6,000枚のポスターがサイゴンに輸送された。

ポスターもただのデザインの域を越えてアートのフォームになりうるという事をベトナムの観客に紹介できる素晴らしいチャンス!とスーと私は今年の夏前から乗り気で企画していたもののぶつかったのが関税の壁。ベトナムは紙と布の輸入にやたらと厳しい。ただでさえ運送料が結構かかるのに無料で配布するポスターの関税に払う大金はないとの事でニュージーランド領事館に支援を求めた。心よく支援を約束してくれたのが総領事のPeter Healy氏。NZプロモーショナルマテリアルという事で領事館宛で荷物を送ったので問題なし!と思っていたら荷物がこれまた届かない。何があっても大丈夫なように1ヶ月半も前に郵送を手配したのになんとAPECの関係で船が入港できないという。APECの終了があんなに待ち遠しかったのは人生で初めて。(笑)終了とともに領事館も迅速に対応してくれて何とか間に合った!良かった!

今回はポスターを安全にお持ち帰りいただこう!+少し収入も得よう!という事でチューブを300本用意した。一本3万ベトナムドン(約2米ドル)で会場内で売る。売れ行きは好調。クリスマスセールさながらの盛り上がりぶりで大量のNZアートポスターがベトナム人や在住外国人のお家に散っていった。

参加アーティスト:Andrew McLeod, Billy Apple, Dane Mitchell, et al, Francis Upritchard, Gordon Walters, Jonh Reynolds, Lisa Reihana, Mark Adams, Peter Robinson, Yuk King Tan and Yvonne Todd

12/6/06

New Works from Pearl River Delta






a little blah blahイベント第2弾は11月29日にClub Berlinというナイトクラブを貸し切って行った。キューレーターは現在香港のPara/Siteのキューレ—ターを務めるTobias Berger。Pearl River Delta からの選りすぐられたアーティストの作品が紹介された。アン・ハーの訃報以来あまり見かけていなかった若手アーティスト達も顔を出してくれた。

参加アーティストは下記の通り:
Cao Fei, Erkka Nissinen, Hu Xuangqian, Huang Jianbo, Jiang Zhi, Mai Yongxi, Xu Shuxian, Ye Jianhui, Yuk King Tan

ビデオアートの上映会は他の展覧会に比べて比較的企画運営し易いのだが(作品がもちろん面白いのが前提だが、基本的に会場の音響等が整っていれば成功する確率が高い)今回は上映会は盛況のうちに終わったがそれまでが大変だった。24日まで来越できないTobiasに事前に作品をハードドライブに入れて送ってもらったのがdoor to doorに頼んだにも関わらず待てども待てども来ない!通常は東京や他の都市からやってくる友人に手荷物でもってきてもらうのだが今回は運悪く誰もタイミング良く来越予定がなく、結局リスクを承知でベトナムに直送してもらう事にしたのが原因。Door to doorだから大丈夫かと思いきや、香港を出た荷物が行方不明に。トラッキングナンバーで検索してもホーチミン市に入ったところまでしかたどれない。 Tobiasが手荷物でもってきてもらったものを細かい編集なしで(タイトルページ等)見せるしかないと諦めたところでポストに地元の郵便局からメモが。急いで取りにいくと半分分解されたハードドライブが待っていた。(涙)有り難い事に中身は損傷なかったので大事には至らなかったが、あんなにヤキモキしたのは久しぶり。とにかく無事に終わって良かった!そしてもう二度とリスクはおかさないぞ!と胸にかたく誓う。

12/4/06

Yuk King Tan個展




サイゴン・オープン・シティーの開幕に合わせてa little blah blah(albb)も3連夜でサテライトイベントを行った。サテライトといっても肝心のサイゴン・オープン・シティーのほうが曖昧な幕開けだったので結局我々が話題を独占する形になりalbbウィークのようになってしまった。笑。結果的には我々の活動を来越中のアート関係者やアーティストに紹介できるいい機会になったのでラッキーだった...かな。

11月28日はa little blah blahのキューレーションでGalerie Quynhと共同プレゼンターという形で中国系ニュージーランド人のYuk King Tanの個展。スーも私も前々からすごく好きだった彼女の作品を初めてベトナムに紹介する事ができた。

フォトペーパーにスキャンしたイメージを蠟燭の炎で燻した表面にスクラッチドローイングをほどこしていく手法。発展とともに美しく変わっていく都市とそれに伴ってうまれる大気汚染や、もっと大きな意味で「失われていく」何かを力強く表現している。その他にもビデオ作品1点と写真の作品が2点。オンラインエキジビションがwww.galeriequynh.comより閲覧可能。

オープニングにはギャラリィーの外にバーを設置。サイゴンよりすぐりのスレンダー美形トリオをバーテンダーに抜擢。(個人的趣味だけど...笑)パーティーに華を添えてくれた。

12/3/06

サイゴンオープンシティー(SOC) 第1章「解放」開幕...?!?


サイゴンオープンシティー(SOC) 第1章「解放」が微妙な形でスタートした。 開幕一週間前にDinh Q. Leの家でRirkritやJeabと夕食を共にした時点ではまだ文化情報局からは口約束だけで、許可証は受け取っていなかった。特に戦争証跡博物館の使用許可が下りないようでそこで展示予定のアーティストをどうするのか相談していた。 そんな状況下で彼らの妙に達観した(?!)落ち着き具合に不安と同時に一種の安心感も覚えたのは確かだった。「ベトナムみたいな国ではこの展開はしょうがない。政府との問題は騒いでも何もならないものは何もならない!」という彼らのある意味正論に妙に納得もした。「プランBどころではなくプランXまであるから大丈夫!」というRirkritに「もしかしたら何とかなるのかも!」と期待した。

参加アーティストや関係者が来越し始める中、プログラムが公開されず4、5日後に迫っているオープニングなのにいつどこで何が行われるのか全く情報がない。我々ローカルはまだいいとして外国からはるばるやってくるアート関係者の事を思うと気の毒だった。各国のアート関係者からa little blah blahにも「情報乞う!」の連絡が入るが我々も情報がないので答えられない。結局ローカルをすっ飛ばして香港のアジア・アート・アーカイブに先にプログラムが渡り我々ローカルは香港経由で情報を得るという結果に。(笑)

結局、許可証の無いまま11月25日を迎え、予定されていたプレスカンファレンスとプレビューは当日になって中止。デイビット・ロスによるヨーコ・オノ作品解説トーク(?!)のみの開催。これも直前で会場が変更され、おまけに開始時間を早めたため(直前に会場変えるならせめて皆が移動してきても間に合うように開始時間を遅めようよ〜!)見逃した人も多かった。翌26日にSOCスタジオスペースで非公式オープニングが行われたが 戦争証跡博物館に展示予定だった作品がこれまた直前にSOC建物内に変更になったため会場の一部では搬入が進行中という状況。「なぜ直前まで許可証を悠長に待っていたのか?もっと対応策はあったはず」等の厳しい意見が地元を中心に挙る一方で、 海外アート関係者等の目にはこの混沌も歴史的なステップの一過程として面白く映ったようで案外同情的、協力的な空気が大半を占めていたのが意外だった。

まぁ、たしかにお粗末なスタートにはなったが、確かにベトナムのシステムを浮き彫りにする面白い展開ではある。SOCが言っていたようにたしかに文化情報局から口約束はあったようだ。実際ベトナムの共産党のホームページでは「ベトナム国際アート展開催しまぁーす!」なんて情報がアップされていたりする。(笑)SOCオフィスにはハノイの文化情報局の高官から「娘がサイゴンに今いっててねぇ、是非オープニングに行かせたいんだけど招待状を送ってやってくれんかい」なんて問い合わせもあったようだ。(笑)結局トラブルを起こしているのはサイゴンの末端の政府の役人達。結局は自分たちの権力を示す一種のゲームとあとは賄賂が目的なんだろうとの見方が強い。

なんだがボロボロの始まりだが、でも私は個人的に全面的に否定しているわけではない。正直来年に残された第2章、最終章にむけてどう政府の対応が変化していくのか、そしてどこまでSOCが延びていけるのか大きな関心を抱いている。

今回私が批判する事があるとすれば、SOCが口約束を信じすぎて悠長に構えすぎた事。ベトナムでは、この手に欲しいものを掴むかでは口約束なんて無いのも同然。手につかんだって没収されるくらいなんだから。プランZまであると豪語していたわりには最後の最後に会場変更したりして外国からのアーティストは帰国までのわずかな時間でインスタレーションを終えなければいけなかったり気の毒だった。万が一の事を想定してSOCの事務所建物内の環境を整えておくくらいの準備はあっても良かったと思う。

写真:
(上段左から)
1)元サンフランシスコ近代美術館(SF MOMA)館長、David Ross
2)27日に行われたキューレーターと参加アーティストのディスカッション
3)同上ディスカッションの観客
(下段左から)
1)シンガポールからOng Keng Sen、韓国からSunjung Kimがゲスト・スピーカーとして招待
2)25日プレスカンファレンスとプレビューが中止になったので急遽Jeabがプレス関係者等に説明会を実施

12/2/06

友人の死


この2週間いろいろあった。

11月5日付けの私のブログでも紹介した若手グループARROWの中でも将来的に有望だと期待していたアン・ハー。a little blah blah のトーク系にも顔を出してくれたりとこれからもっと仲良くなりたいと思っていた矢先に彼女の訃報を聞いた。

早朝5時..自宅で喉を切られて殺された彼女。まだ23歳の若さ。美大を卒業して、腐れ縁だった昔の彼と区切りをつけて新しい彼と(彼もアーティスト)スタートをきったばかりだった。

彼女を殺めたのはこちらも私の知り合い。N君。仕事も何回かしたことがある。一日に100枚もデッサンするような真面目な画家だった。アン・ハーとの長年の恋に彼のほうは終止符が打てなかったのか...殺意の本当のところは彼が留置所にはいっていて面会もできないので我々には謎のまま。殺人には死刑が頻繁に施行されるベトナム。彼の場合は殺害直後警察に自首したので本来なら死刑は免れて終身刑どまりのはずなのだが、もし彼女が抵抗できない寝込みを襲っていた場合は死刑の可能性も残っているそうだ。彼は28歳。

サイゴンの小さなアートコミュニティーの中のさらに小さな若手アーティストのコミュニティー。2人の友人を最悪の形で失って皆の表情は暗い。アン・ハーの追悼展覧会が来週にも企画されている。